ステンレス溶接を行う当社社員

サンメック社員がステンレス溶接を行っている様子

「ステンレスの溶接がうまくいかない…」「焼けや歪みが気になる…」そんな悩みを抱えていませんか? ステンレス溶接において、正しい方法を選択しないと強度不足や熱影響による変形が発生する可能性があります。一方で、ステンレスは耐久性と耐食性に優れるため、適切な方法を選び、高品質な仕上げを行うことが必要不可欠です。

本記事では、ステンレス溶接の専用工場をも持つ株式会社サンメックが、ステンレス溶接に良く用いられるアーク溶接の中から、特にステンレス溶接に適するTIG溶接やMIG溶接を用いた方法を中心に解説します。使用する板の厚さや材質に応じた技術、作業時の熱管理、必要な道具や対応する溶接棒の選び方、加工時に発生する熱の影響を抑える方法などを一覧で紹介。また、溶接後に適切なシールドガスを選定することで、品質の安定性を向上させるポイントについても解説します。

さらに、当社の製品事例の紹介も行いながら、加工現場で培われた溶接技術や、高い精度を求められる製品の製造する際に重要なポイントを詳しく解説。特に、鉄との違いや溶接範囲に応じた対応策、溶接時間を短縮するためのコツやその他の工程管理についても触れ、初心者でも分かりやすく説明します。ステンレス溶接の基礎から応用までを理解し、適切なガスと溶接技術を組み合わせることで、効率的な作業を可能にする方法を解説します!

また、特急のお困りごとをお持ちの方につきましては、ぜひお気軽にお問い合わせください。

ステンレス溶接って?

当社の薄物ステンレス溶接製品の一例

当社の薄物ステンレス溶接製品

ステンレス溶接の概要

ステンレスとは?

ステンレス鋼(SUS)は、鉄を主成分としながらもクロムを10.5%以上含む合金で、優れた耐食性や強度を持つことが特徴・メリットです。クロムのほかに、ニッケルやモリブデンなどを加えることで、耐熱性や加工性を向上させることも可能です。
一般に、ステンレスの材質の種類としては、以下のようなものがあり、当社も溶接・製缶品の製造実績を豊富に有しております。

  • オーステナイト系ステンレス(SUS304, SUS316など):高い耐食性と加工性を持ち、溶接に適している。
  • フェライト系ステンレス(SUS430など):磁性を持ち、コストが低いが、溶接時の割れに注意が必要。
  • マルテンサイト系ステンレス(SUS410など):高強度で耐摩耗性が高いが、溶接後の焼き戻し処理が必要。

ステンレス溶接のメリットと用いられる理由

ステンレス鋼は、耐食性・強度・美観・耐熱性などの優れた特性を持つため、幅広い分野で使用されています。しかし、実際の製品として使用する際には、部材を接合する必要が生じる場合が多く、その方法として溶接が多く用いられます。では、なぜステンレスの接合に溶接が選ばれるのでしょうか?

  • 高い耐食性を維持しながら、部材同士を接合できる!

ステンレスの防錆性は、鉄にクロムを含ませることで、表面に 不動態皮膜(酸化被膜)を形成し、サビや腐食を防いでいます。一般に金属部材の接合方法として ボルト等を用いた機械的接合もありますが、多くの場合接合部に隙間が生じ、水や化学物質が浸透してしまうため、腐食が発生するリスクがあります。
その点、溶接は接合部が一体化するため、腐食リスクを抑えられるというメリットがあります。ただし、溶接時の熱影響によって不動態皮膜が損傷するため、適切な溶接技術や後処理(酸洗い・電解研磨など)が必要になります。

  • 高い強度での接合が可能

ステンレスは、その強度と耐久性から構造材料としても広く使用されています。ボルトや接着剤による接合では、応力集中や接合部の剥離などが発生しやすく、特に負荷のかかる部品では十分な強度を確保することが難しい場合が多いです。
一方、溶接による接合では、接合部が母材と一体化するため、高い引っ張り強さ・耐衝撃性を確保できるという利点があります。特にTIG溶接やMIG溶接を適用すれば、強度を維持しながら高品質な接合が可能であり、後ほどそれぞれの溶接方法についても説明します。

  • 継ぎ目の無い接合で密閉性を確保

ステンレスが用いられる設備の中には、気密性や水密性が求められるものも多く存在します。例えば、半導体製造装置、発電プラントの配管、真空チャンバー などでは、内部にガスや液体を通すため、完全に密閉された構造が必要になります。
ボルトやフランジなどの機械的接合では、どうしてもわずかな隙間が発生し、ガス漏れや液漏れのリスクが高まるため、完全密閉が求められる部分では溶接が必要不可欠になるのです。

  • 部品・製品設計の自由度が高い

機械的接合の場合、設計時にボルト穴や接着面の確保が必要になりますが、溶接では接合方法の制約が少ないため、より複雑な形状の設計が可能です。特に、大型構造物や特殊形状のタンク、プラント設備では、溶接を活用することで効率的な設計が実現できます。
また、溶接は異種金属との接合も可能であり、用途に応じた最適な材料選定がしやすくなる点も、ステンレス溶接が選ばれる理由のひとつです。

ステンレス溶接の主な用途

ステンレスは耐食性や強度(耐久性)、美観・耐熱性等の様々な面で優れており、ステンレス溶接を用いて様々な形状の製品を作ることが可能になることから、幅広い分野で使用されております。ステンレス溶接、製缶が活用されている業界をいくつかピックアップして紹介します。

  • 発電プラント業界:タービン部品、ボイラー、配管等
  • 建設機械業界:重機フレーム、油圧部品、補強材、保守用足場等
  • 半導体業界:製造装置フレーム、半導体製造装置内部のガス供給ライン、真空バルブ、真空チャンバー等
  • 工業設備業界:化学プラント向け各種部品、加熱炉・タンク等

これらの用途では、高い耐久性や美観が求められるため、高いステンレス溶接技術と適切な手法の選定などのノウハウが必要になります。

ステンレス溶接には


アーク溶接がよく用いられる!

アーク溶接とは?

当社がアーク溶接を行っている様子

アーク溶接は、電極と母材の間に高温の電気アークを発生させ、その熱を利用して金属を溶融・接合する溶接方法の総称です。高温で金属を直接溶かすため、強固な接合が可能であり、さまざまな金属に適用できます。

アーク溶接にはいくつかの種類があり、TIG溶接・MIG溶接・被覆アーク溶接・MAG溶接などが代表的です。
中でも、今回の記事ではステンレス溶接に適しているTIG溶接・MIG溶接にスポットライトを当てて紹介します。

溶接の種類に関しては、弊社で別記事も公開しておりますので、さらに深く知りたい方はよろしければこちらの記事もご参照ください。

なぜステンレス溶接にはアーク溶接がよく使われるのか?

ステンレス溶接において、アーク溶接が選ばれる理由は以下のようなメリットが得られるためです。

  • 強度の高い接合が可能

ステンレスは高い強度・耐久性を持つため、部品や構造物の接合には、同じく高い強度を確保できる溶接技術が求められます。アーク溶接は、金属を高温で直接溶融し、一体化させるため、機械的接合(ボルトやリベット等)よりも強固で耐久性のある接合が可能になります。特に、TIG溶接やMIG溶接では、適切な電流やシールドガスを選択することで、ステンレス本来の強度を損なうことなく高品質な接合ができるのが特徴です。
さらに、ステンレス溶接では、母材と溶加材が適切に融合しなければ、応力集中や亀裂の発生リスクが高まるため、アーク溶接を用いることで、これらの問題を最小限に抑えることができます。また、耐熱性の高いステンレスを溶接する際にも、適切な温度管理と溶接方法を組み合わせることで、熱影響による脆弱化を防ぎながら、強度の高い接合が可能になります。

  • 耐食性を損なわずに接合できる

ステンレスの最大の特徴は耐食性の高さであり、この特性を活かすためには、溶接時に酸化や炭化を防ぐことが不可欠です。アーク溶接では、シールドガス(アルゴン・ヘリウムなど)を使用することで、大気中の酸素との接触を抑え、溶接部の酸化を防ぐことができます。これにより、溶接後もステンレスの表面に不動態皮膜(クロム酸化皮膜)を形成しやすくなり、耐食性を維持することが可能になります。
また、ステンレス溶接では熱影響部(HAZ:Heat Affected Zone)が発生しやすく、この部分の耐食性が低下しやすいため、適切な熱管理が求められます。アーク溶接では、パルス制御や低電流溶接を活用することで、熱影響部を最小限に抑え、耐食性の低下を防ぐことが可能です。さらに、溶接後の酸洗い処理や電解研磨を組み合わせることで、耐食性の回復を促進し、長期間の使用でも高い耐久性を維持することができます。

  • 多様な板厚に対応できる

ステンレス鋼は、用途に応じて厚みが異なり、薄板から厚板までさまざまな形状で使用されます。アーク溶接は、このような幅広い板厚に対応できる汎用性の高さが特徴であり、適切な電流設定や溶接方法を選択することで、最適な接合が可能になります。
例えば、薄板(1mm以下)の溶接では、TIG溶接を低電流で使用し、精密な制御を行うことで、歪みを最小限に抑えながら美しい仕上がりを実現できます。一方で、厚板(10mm以上)の場合は、MIG溶接を活用することで、適切な溶け込みを確保しながら、強度を維持することが可能です。
また、ステンレスの種類によっても、溶接時の熱伝導率や膨張率が異なるため、溶接方法を適切に選択することが重要です。特に、オーステナイト系ステンレス(SUS304、SUS316など)は熱膨張しやすいため、アーク溶接の熱制御を適切に行うことで、溶接部の歪みを抑える工夫が求められます。このように、アーク溶接は多様な板厚に対応できるだけでなく、溶接条件の調整次第で、異なるステンレス材質にも適用可能な点が大きな強みとなります。

  • 設備を整えることで品質の均一化も狙える

アーク溶接は、設備や環境を適切に整えれば、高品質な溶接を安定して行うことが可能な点も大きなメリットです。特に、TIG溶接やMIG溶接は、自動化が進めやすく、量産体制に適した技術として広く採用されています。
また、新型のTIG・MIG溶接機では、溶接条件(電流・電圧・ガス流量など)をデジタル制御することで、各製品ごとに最適な溶接プログラムを設定できるため、複雑な形状や厳しい公差が求められる部品でも、高精度な溶接を行うことが可能になります。このような技術の進化により、アーク溶接は単なる手作業の技術から、高度な自動化技術と融合した精密溶接の手法へと進化しています。

他のステンレス溶接手法との比較

ステンレスは耐食性や強度(耐久性)、美観・耐熱性等の様々な面で優れており、ステンレス溶接を用いて様々な形状の製品を作ることが可能になることから、幅広い分野で使用されております。ステンレス溶接、製缶が活用されている業界をいくつかピックアップして紹介します。ステンレス溶接においては、強度や耐食性の維持、加工の柔軟性や適用可能範囲を考えると、アーク溶接が最も優れていると考えられます。

ステンレス溶接手法の種類と比較

溶接方法特徴ステンレスへの適用性主な用途
アーク溶接(TIG溶接・MIG溶接等)金属を直接溶融して接合◎(幅広い用途に適用可能)配管、構造物、大型部品、精密部品
レーザー溶接熱影響が少なく、高精度な接合が可能〇(微細部品には有効)電子機器、微細部品
スポット溶接抵抗熱を利用して局所的に接合△(薄板では利用することもある)車両、板金加工
拡散接合圧力と熱を加えて接合△(チタン×銅など特種部品で活躍)航空宇宙、特殊部品

アーク溶接の種類とその違い

ステンレス溶接に適用可能なアーク溶接法にもいくつか種類がございます。まず、簡易的な表を以下に示し、続けて各手法の特徴や利点等を説明いたします。

アーク溶接手法の種類

アーク溶接手法特徴メリットデメリット主な用途
TIG溶接高精度・美観重視高品質・耐食性維持作業速度が遅い精密部品・美観が求められる製品
MIG溶接量産向け・高速作業作業効率が高いスパッタが発生しやすい大量生産・厚板構造物
被覆アーク溶接屋外作業向け風の影響を受けない仕上がりにムラが出やすい屋外現場施工・メンテナンス

※スパッタ:溶接時に発生する溶融金属の飛び散りで、周囲に付着すると仕上がりや作業性に影響を与える。

TIG溶接

当社がTIG溶接を行っている様子

TIG溶接は、タングステン電極を使用し、アルゴンなどの不活性ガスでシールドしながらアークを発生させる溶接方法です。溶接時にスパッタ(溶融金属の飛び散り)が発生しにくく、精密な仕上がりを実現できるため、美観が求められる溶接に最適です。

  • メリット
  • 高品質な仕上がり:溶接ビードが滑らかで、美しく仕上がる
  • 精密な溶接が可能:制御がしやすく、薄板や小型部品の溶接に適している
  • 耐食性を維持しやすい:シールドガスにより酸化を抑制できる
  • デメリット
  • 作業速度が遅い:他のアーク溶接と比較すると、手作業では効率が低い
  • 技術者の熟練度が必要:手動で行う場合、一定の技術力が求められる
  • 主な用途
  • ステンレス製の精密部品や装飾部品の溶接
  • 建設機械・半導体製造装置の筐体やフレーム
  • 食品、医療機器等美観性も要する製品および設備部品

MIG溶接

当社がMIG溶接を行っている様子

MIG溶接は、溶加材(ワイヤ)を連続的に供給しながら、アルゴンや混合ガスでアークをシールドする方法です。TIG溶接と比較してスピードが速く、生産性が高いため、量産品の製造に適しています。

  • メリット
  • 作業効率が高い:ワイヤが自動供給されるため、長時間の連続溶接が可能
  • 操作が比較的容易:TIG溶接よりも習得しやすく、作業者の負担が少ない
  • さまざまな板厚に対応:薄板から厚板まで幅広く対応可能
  • デメリット
  • スパッタが発生しやすい:溶接後の仕上げ加工が必要になる場合も
  • 見た目の仕上がりはTIG溶接ほど綺麗にならない場合が多い
  • 主な用途
  • 量産性が求められるステンレス部品(フレーム・パイプ等)
  • 建設機械・発電プラントの部品接合
  • 厚板や中厚板の構造材の製造

被覆アーク溶接(手棒溶接)

被覆アーク溶接(SMAW)は、手持ちの溶接棒を用いてアークを発生させ、被覆材の燃焼によって溶接部を保護する方法です。TIGやMIGと違い、シールドガスを必要としないため、風の影響を考慮する必要がなく、屋外作業や現場作業に適しています。

  • メリット
  • 設備がシンプル:小型の電源装置と溶接棒があれば作業可能
  • 風の影響を受けにくい:シールドガスを使用しないため、屋外でも使用しやすい
  • 比較的安価に施工できる
  • デメリット
  • 溶接速度が遅い:TIGやMIGに比べて効率が低い。
  • スラグ(溶接後の被膜)の除去が必要
  • ステンレスでは適用範囲が限られる(薄板や高精度な仕上げには不向き)
  • 主な用途
  • 屋外での補修作業
  • 工場設備のメンテナンス
  • 耐久性が求められる建設機械のフレーム補強

ステンレス溶接におけるアーク溶接では、主にTIG・MIG・被覆アーク溶接等が使用されます。それぞれ特徴や適用範囲が異なるため、用途や求められる品質に応じて使い分けることが重要です。特に精度が求められる場合はTIG溶接、生産効率を重視する場合はMIG溶接が選ばれることが多いです。サンメックでは、用途に応じた最適な溶接技術の選定と技術力を活かし、高品質な製品製造を実現しております。

ステンレスに適した溶接手法とは?

ステンレスの溶接では、用途や要求される品質に応じて最適な溶接方法を選ぶことが重要です。ここでは、溶接対象の材質や板厚、求められる品質に応じた溶接方法の選択基準を解説し、サンメックの技術がどのように活かせるかについて紹介します。まずは簡単にステンレス溶接で求められる品質に対する最適な溶接方法について、表でまとめます。

ステンレス溶接の求められる品質に対する最適な溶接方法のまとめ

求められる品質最適な溶接方法理由・特徴
高い強度を重要視する場合MIG溶接 / MAG溶接深い溶け込みが得られ、機械的強度が高い
美観を重要視する場合TIG溶接 / レーザー溶接スパッタが少なく、滑らかな仕上がりが可能
耐食性を維持したい場合TIG溶接 / 拡散接合シールドガスによる酸化防止、熱影響が少ない
歪みを最小限に抑えたい場合TIG溶接(パルス制御) / レーザー溶接低い熱影響でひずみが少なく、精密加工に適している。

ステンレスは熱膨張率が高いため、特に薄板や精密部品では歪み対策が重要です。溶接時の熱影響を最小限に抑える工夫が求められるため、パルスを用いたTIG溶接やレーザー溶接が効果的であるほか、弊社の強みでもあるTIG溶接、MIG溶接でステンレス溶接におけるニーズを広くカバーすることが可能です。

溶接対象(板厚・材質)による最適な選択肢

ステンレスは、板厚や材質によって適した溶接方法が異なります。適切な選択をしないと、強度不足、耐食性の低下、歪みの発生などの問題が起こる可能性があります。以下の表で各種ニーズにおける適切な手法についてまとめます。

ステンレス溶接の板厚・材質のニーズに対する適切な溶接方法のまとめ

板厚・材質のニーズ適切な溶接手法理由
薄板(1~3mm)の溶接TIG溶接 / レーザー溶接・TIG溶接では、定電流で制御しやすく、薄板ステンレスの歪みを抑えた高品質な仕上がりが可能
・レーザー溶接は、熱影響が非常に少ないため、薄板かつ微細部品の加工時には良い選択肢となる
中厚板(3~10mm)の溶接TIG溶接 / MIG溶接・TIG溶接は、美観と精度を求められる場合に最適
・MIG溶接では、TIGと比較して美観性は下がるが、作業速度が速いためコストダウンを図れる
厚板(10mm以上)の溶接MIG溶接 / 電子ビーム溶接(EBW)・MIG溶接は、高温による高い溶け込みと強度を確保可能
・電子ビーム溶接では、より深い溶け込みが必要な場合に有用
異種金属の接合(例:ステンレス×アルミ、ステンレス×チタン)拡散接合 / TIG・MIG溶接(ステンレス×アルミ、ステンレス×鉄等)・拡散接合は、ステンレス×チタン等融点が大きく異なる場合にも耐食性を損なわずに接合が可能
・TIG・MIG溶接でも、適切な溶加材(Ni系溶加材等)を用いることで接合部の品質を損なわずに異種金属の接合も可能。しかし、チタンや銅など融点が異なる異種金属の接合は接合部の品質低下が懸念される為、難しい

まとめると、ステンレス溶接における板厚はTIG・MIG溶接によって広くカバーすることが可能です。一方で、材質のニーズ(異種金属の接合)においては、ステンレス×鉄(低炭素鋼)やステンレス×ニッケル合金、ステンレス×アルミの接合は、TIG・MIG溶接においても適切な溶加材の選択等の工夫を行う事で接合部の品質を落とさずに結合させることが可能ですが、TIG・MIG溶接の場合、高温で金属を融合させるため、金属化合物(IMC)(例:FeAl, TiNi等)が形成されることがあり、これは非常に脆く、接合部の強度を著しく低下させる原因にもなることが主要因で基本的には異種金属の接合に適している手法とは言えません。
特にチタンや銅などは航空宇宙分野等、耐久性と高精度が求められるため、この場合は拡散接合等原子レベルでの接合が可能で接合部の品質を落とさずに結合可能な手法を用いる必要があります。
一方で、当社は要求品質水準が高いプラント業界向けのステンレス×アルミ等の溶接実績もございますので、設計上必要な場合等は技術相談から承りますので、お気軽にお問い合わせください。

株式会社サンメックが活かせる強み

サンメックでは、高品質なステンレス溶接を実現するための設備と技術を駆使し、各種の溶接方法に対応しています。

  • 高精度なTIG溶接を実現するエンジニアが多数在籍しており、精密部品や美観が求められる製品の溶接に対応
  • MIG溶接を用いた効率的な溶接加工により、コストと品質のバランスを最適化した提案が可能
  • 大型製缶品の製造実績も多数保有。厚板の溶接にも対応し、強度を確保しながら高品質な仕上がりの製品を提供
  • 熱影響による歪みを最小限に抑えるための最適な溶接手法を採用し、高精度なモノづくりを実現
  • 最新鋭の5軸加工門型マシニングセンタを保有。高い品質水準を満たす検査設備も整えており、設計~部品加工~溶接・製缶~酸洗い・ブラスト・塗装等の表面処理~検査~据付工事まで、ワンストップサービスが提供可能

特に5番が当社ならではの強みであり、一貫生産体制を築くことによって、お客様のとのやり取りの煩雑さや工程間ロスの最小化によるコストダウンの提案を可能としております。耐食性を担保する酸洗い、美観性を高めるブラスト・塗装等の表面処理に対応、大手プラントメーカーとの関係性が深く、高い品質管理水準を満たすための最新鋭の測定機器と各種非破壊検査に対応していることなど、お客様の幅広いニーズにお応えすることが可能です。
ステンレス溶接に限らずともお困りごとがございましたら、技術相談から承りますので、お気軽に下記お問い合わせフォームからご連絡ください。

ステンレス溶接を成功させるアーク溶接のコツ

ステンレス溶接では、適切な溶接方法を選択し、作業条件を最適化することで、高い強度・耐食性・美観を兼ね備えた溶接を実現できます。本章では、ステンレス溶接を成功させるための具体的なコツを解説します。

適切な溶接方法を選ぶ

TIG溶接とMIG溶接の使い分け

ステンレス溶接では、TIG溶接とMIG溶接が主に使用されます。それぞれの特徴と最適な用途を理解し、適切な方法を選択することが重要です。

TIG溶接とMIG溶接の使い分け

板厚・材質のニーズ特徴用途
TIG溶接精密で美しい仕上がり、高い耐食性精密部品、装飾用途、薄板溶接
MIG溶接作業効率が高く、コストダウンが図れる厚板・中厚板、フレームや筐体の接合
(被覆アーク溶接)屋外作業やメンテナンス向け補修作業、耐久性の高い溶接

POINT:鉄とステンレスの違いを考慮する
ステンレスは鉄と比較して熱膨張率が高く、熱伝導率が低いため、適切な溶接方法を選ばないと歪みが発生しやすくなります。特に、TIG溶接のパルス制御を活用すると、熱影響を抑えながら高精度な溶接が可能になります。

溶接時の電流・電圧設定

アークを安定させるためのポイント

アーク溶接では、適切な電流値と電圧を設定することで、均一な溶融と高品質な仕上がりを実現できます。

板厚によるアーク溶接の適切な設定のまとめ

板厚特徴
薄板(1〜3mm)主にTIG溶接を利用。低電流・高周波パルス制御で歪みを抑える
中厚板(3〜10mm)安定した電流で均一なビードを形成
厚板(10mm以上)多層溶接(マルチパス)を活用し、適切な溶け込みを確保

POINT:溶接欠陥を防ぐために、電流・電圧を調整する
ステンレス溶接では、電流・電圧の設定値が不適切な場合、溶接欠陥を起こしてしまう恐れがあります。
まず、電流値が高すぎると、溶融金属の飛び散り(スパッタ)が増加し、必要以上に深く溶け込んでしまうため、溶接部の品質が低下する可能性があります。逆に電流が低すぎると、アークが安定せず、ビードの形成が不均一になり、接合部の強度が十分に確保できなくなります。
また、電圧が高すぎると、溶接ビードが過度に広がり、熱影響部(HAZ)が大きくなることで、溶接部周囲の材質特性が変化しやすくなります。一方で、電圧が低すぎると、アークが不安定になり、十分なビード形成ができず、接合不良が発生する可能性があります。そのため、適切な電流・電圧の設定が、高品質な溶接を実現する上で重要となります。

シールドガスの選択

TIG溶接におけるシールドガス

TIG溶接では、アルゴンガスが基本ですが、ヘリウムを混合することでアークの安定性が向上し、深い溶け込みが可能になります。

TIG溶接におけるシールドガスの種類と特徴

ガスの種類特徴
アルゴン100%ステンレス溶接の標準、アークが安定する
アルゴン+ヘリウムアークの温度上昇により、溶け込みが深くなる
アルゴン+水素耐酸化性を向上し、ステンレスの光沢を保つ

MIG溶接におけるシールドガス

MIG溶接では、二酸化炭素(CO₂)や混合ガスを使用することで、スパッタを抑えつつ安定した溶接が可能になります。

MIG溶接におけるシールドガスの種類と特徴

ガスの種類特徴
アルゴン80% + CO₂20%安定したアークと低スパッタ
CO₂100%コストが低いが、スパッタが増える
アルゴン + 酸素ビードの広がりを制御しやすい

熱影響と歪み対策

ステンレスは熱膨張率が高いため、溶接時に歪みが発生しやすい特徴があります。そのため、以下の対策を行うことで、歪みを最小限に抑えることができます。

歪みを抑える方法

  • 仮付け溶接を活用
    事前に仮付けを行う事で、溶接時の歪みを分散させることが可能です。
  • 交互溶接(バックステップ溶接)を活用
    一方向で溶接を進めるのではなく、交互に溶接を進めることで歪みを軽減する。
  • 溶接の順番を工夫する
    低温域から高温域へ徐々に加熱することで、熱膨張をコントロールする。

また、パルス溶接を活用することで、熱入力を抑えながら均一な仕上がりを得ることができます。

溶接後の仕上げ処理

酸洗いによる表面処理

溶接後には、酸洗いを行うことで焼けやスケールを除去し、ステンレスの耐食性を維持することが重要です。酸洗いは、硝酸やフッ酸を用いて、溶接部の酸化膜やスパッタを取り除く処理です。酸洗いについては当社が運営する別サイトにて、仕組みや必要性について詳細に説明している記事がありますので、詳細について気になる方は、下記ボタンより、記事をご参照ください。


ステンレス溶接を成功させるためには、適切な溶接方法の選択、電流・電圧の設定、シールドガスの選定、熱影響の管理、仕上げ処理を組み合わせることが重要です。特に、TIG溶接では美観と精度、MIG溶接では生産性と強度を考慮しながら、最適な溶接手法を選ぶ必要があります。

サンメックでは、これらの技術を活かし、高品質なステンレス溶接を提供しています。 製品や用途に応じた最適な溶接方法をご提案いたしますので、ぜひご相談ください。

当社のステンレス溶接製品事例

当社では、大手プラントメーカーのサプライヤーとして高い品質管理基準を構築のもと、多種多様なステンレス溶接品の製造実績を保有しております。本章では、実際に当社が製造を行った製品事例をご紹介いたします。

ASME規格品 ステンレス溶接、機械加工、非破壊検査、耐圧検査

ASME規格品 ステンレス溶接、機械加工、非破壊検査、耐圧検査
材質ASME(米国機械学会)規格の各種ステンレス鋼材
業種海外石油プラント関連
数量ロット単位オーダー
サイズ3/4inch~5inch

複数の特殊ステンレス鋼材の溶接を要し、完全無欠陥の裏なみ溶接までを求められた海外石油プラントで利用されるステンレス溶接加工製品となります。また、弊社にて部品加工及びRT(放射線透過試験)、PT(浸透探傷試験)、耐圧試験までの検査および検査証明書の発行までを行っております。

ASME等の海外特殊規格に適合する製造・検査を行える体制を築いており、JISなどオーソドックスな規格に加え、特殊規格の製品の製造~検査まで当社は対応可能です。

風力発電向け 制御盤収納コンテナ

風力発電向け 制御盤収納コンテナ
材質SS400, SUS304, SUS316
業種風力発電業界向け
数量各1式(計3式)
サイズタイプA:W5400×L8800×H4800,
タイプB:W5100×L6200×H4900,
タイプC:W5500×L12200×H5000

風力発電設備における制御盤の収納及び保護用のコンテナとなります。本製品は当社にて設計段階から一貫製造を行っており、株式会社日立製作所 電力ビジネスユニット様へお納めしました。制御盤の保護が重要であるため、高気密性に向けた構造設計および溶接製缶・組立を実施しております。また、SS材とSUSの異種金属結合にも対応した製品となります。ステンレス溶接においては、機密性が求められる部分にはTIG溶接を、厚板で強度が求められる部分にはMIG溶接を利用するなど、適切な溶接手法を使い分けて製作した製品となります。

本製品のように、弊社では大型の構造物の製造も得意としており、耐食性および美観性を保つための表面処理から据付工事までをも承れます。


この他にも弊社では多種多様な製造実績について、当ホームページ上にも公開しております。お客様のニーズと合致する製品がある場合もございますので、よろしければ下記ボタンより、各種製品事例についてもご確認ください。

ステンレス溶接のコツのまとめ

サンメック社員が溶接を行っている様子

 ステンレス溶接を成功させるためには、適切な溶接方法の選択、電流・電圧の最適化、シールドガスの適用、熱影響の管理、溶接後の仕上げ処理など、さまざまな要素を考慮する必要があります。特に、TIG溶接は精度と美観に優れ、MIG溶接は作業効率と強度に優れるため、用途に応じた使い分けが求められます。
 また、電流・電圧の調整を適切に行うことで、スパッタの抑制、溶接部の均一化、強度の確保が可能となり、品質の向上につながります。シールドガスの選択も重要であり、TIG溶接ではアルゴンが基本となり、MIG溶接ではアルゴンと二酸化炭素の混合ガスを使用することで、安定したアークを確保できます。
 さらに、ステンレスは熱膨張率が高いため、熱影響を最小限に抑える工夫が必要です。パルス溶接や適切な溶接順序を採用することで、歪みを抑えながら高精度な仕上がりを実現できます。溶接後の酸洗い等の表面処理を行うことで、表面の酸化スケールを除去し、耐食性を維持することも重要です。
 サンメックでは、ステンレス溶接技術に強みを持ち、発電プラント、建設機械、半導体製造装置、工業設備などの分野で、高品質なステンレス溶接を提供しています。また、設計から部品加工、溶接製缶、表面処理、組み立て・据付工事までのトータルエンジニアリングを実現する一貫生産体制を築けているため、幅広いお客様のニーズに対応可能、コストダウンや短納期のメリットも提供可能です。また、大手プラントメーカーの主要サプライヤーとして、品質管理体制の強化は継続して行ってきており、長年培ってきた高い技術力・ノウハウも併せて活用することで高品質な製品を提供しています。お困りごとやご相談がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。